Moonlight scenery

     “ 'll Come again this year, Advent
 


地中海に面した小さな半島と、それを取り巻く群島からなる、
それはそれは小さな王国がありまして。
北側と南側それぞれで、
欧州諸国とも砂漠の地域とも接している格好の立ち位置なので、
機構的にも歴史的にも、
勿論のこと、
政治的にも微妙な立ち位置にある独立国家なのですが


  ……と、まあ いつものお固い紹介はこの辺でご容赦を。




      ◇◇


今日は 11月の28日である。
ちなみに明日は11月の29日で、
日本の語呂合わせだと“いい肉の日”だそうで。
割と日本贔屓なお国なその上、
国民的アイドルどころじゃない、
紛うことなき“全国民のアイドル”たる第二王子様が、
食べ盛りで大の肉好きなもんだから。
それへかこつけた行事とか宴とか、
あの王様や皇太子殿下が思いつきそうだなぁというのは さておいて。


 「今年は最も早い昨日だったんですってね。」
 「はい?」
 「油断しちゃったなぁ。
  12月に入ってからの日曜なんじゃあって
  先入観があったのかしら。」
 「は…?」

いきなりという勢いで、
そんな言いようを並べ始めた、隋臣長曰く“麗しの佑筆様”こと、
翡翠宮 書記長官のナミであり。
知性的な落ち着きをたたえた双眸や、
すべらかな頬、しっとり瑞々しい口許。
最近伸ばしているという明るいみかん色の髪を、
テラスから射し入る光でつややかに濡らしているところなぞは。
確かに、どこぞかの神殿に佇む女神像のような、
魅力的な端正さや蠱惑の香が満ちてもいるが。
執務用のデスクへ肘を突きつつ、
卓上カレンダーを片手に、細い眉根をきゅうと寄せ。
アタシとしたことが迂闊だったなぁ…だなんて、
何とも口惜しいという呟きを洩らすに至って、

 「………………………あ。」

ぴぴんと来たのが、
こちらはダークスーツをきりりと決めた隋臣長のサンジさんなら、

 「あ?」 「なんだ何だ。」 「判るように話せよな。」

ここいらは常春も同然の気候ながら、
それでも観光客などが持ち込みかねない
インフルエンザへの用心を告げにとか。
修復箇所の確認&消耗品の報告や、
何かと忙しさを増すだろ年末でもある、来月の予定の刷り合わせやら。
それぞれに御用があって、
午前のまばゆい光が降りそそぐ執務室を訪のうていた、
此処の主人、第二皇子に縁の深い顔触れ。
ウソップ、チョッパー、フランキー氏が、
ワケが判らんと ますますのこと傾げた首の角度を深くしたものの、

 「だから。アドベントだ、アドベント。」
 「あ。」
 「え…?   あ。」
 「何だよ、お前ら。」

少々遅ればせながら、それでもやっとこ気がついたのが、
車両部のウソップと医療センターのチョッパーと来て、
この宮へのキャリア順のような案配だったものだから。

 「何か伝統の行事とか、しきたりとかあんのかよ。」

俺だけ知らねぇってこたあ そういうこったろと、
そういう理屈へはさすがに気がついたらしい、
一番の新顔であるフランキーが憤慨気味に続けた“例えば”へ、

 「……まあ、伝統っちゃあ伝統かなぁ?」

微妙なお顔になったウソップが、
オレでは上手に言えねぇと、助けを求めるように見やった先で、

 「アドベントは…判るだろ?」

やや遠回しにアプローチしつつ、
にっこりと微笑うチョッパーせんせえであったりし。

 「おお。あれだろ?
  もう幾つ寝るとクリスマスかってのを数える
  カウントダウンみたいな。」

正確には“降臨節”といい、
クリスマスのある日曜までの、
4週間が始まる最初の日曜から数える…ということだそうだが、
もっと厳密にいや、11月30日に最も近い日曜から…なんですてね。
なので、今年は最も早く訪れる年、
なんと11月の27日から数えることとなるのだとか。

 「そういや、アメリカの大統領が
  命拾いした七面鳥さんを選んでましたものね。」

宴や祭事の豪華な料理を賄う、
宮廷料理の責任者を
代々務めて来た家柄の御曹司でもあるサンジが、
しみじみと感慨深そうに口にしたものの、

 「でも、それってのは
  昔はともかく今時分は…。」

 「そうそう。
  今の時代じゃあ、
  小さいお子様が
  毎日1つずつ窓を開けるカレンダーもらって、
  待ち遠しいなぁとだな。」

世間一般の“アドベント”は、そういうものらしいけれどと。
工部担当という同じ畑のエキスパート、
長鼻のウソップさんが途中からを引ったくって説明を続けてから、

 「ところが、ウチじゃあ、
  そのアドベントに別の事態が発生するんだな、これが。」

いかにも勿体ぶったそのまんま、
人差し指をピンと立て、おもむろにそうと付け足した彼だったものだから。

 「別の事態ぃ〜?」

それはまた穏やかならぬ言い回しだが、
それにしちゃあ…皆さん、
それぞれに腰掛けていたソファーやスツールなどなどから
動こうともしないところが大きく矛盾しておいでで。

 「…お前ら、俺をからかおうとしてんのか?」

事と次第によっちゃあ、
そんな料簡構えたことを後悔させてやっても構わねぇぞ なぞと、
少々凄みを利かせて言い立てるお兄さんだったので。

 「ほほお、例えば どうやって。」

苛立つ気持ちは判らんでもないが、
だからって喧嘩や脅しなんてもんに怯む俺らだと思うてかと。
女性にいいとこ見せたくてか、それとも兄貴格の威厳を見せたくてか、
半端な言いようじゃあ効果ねぇぞと
息巻いての胸を張るつもりだったらしい隋臣長殿だったようだけれど。

 「何回かに一度、ドアがどうしても開かなくなるように、
  微妙な調整をしてやろうか、便所のドアとか。」

さすがは、大工仕事のエキスパートにして営繕担当。
大胆なんだか細かいんだか、
なんとも微妙な悪戯を口になさったもんだから。
そんなもんがどうしたと
ヘッと鼻で笑いかかった隋臣長殿だったところが…。

 「うあ、それって夜中に当たるとサイテー。」

 「入るときならともかく、出るときに当たるのが一番問題じゃね?」

 「入るときだって問題だぞ。
  ここの宮って昔の作りだから、そう幾つもトイレないじゃんか。」

 「そうだよなぁ。
  急いでるときに開かないってのは確かに困らんかなぁ。」

 「う…。」

そんなされたら大きに困るぞと、
ウソップとチョッパーがまずは折れ。

 「そうよ、大きに問題だわ。」

ルフィ辺りが、寝ぼけ半分、
開かないなんならって外で…なんてな
とんでもないご乱行に及んだらどうしてくれるのと。
ナミまでが“それは困るぞ”とお顔を曇らせ、

 「……夜中にも付いてる奴がまた、
  そういう方向へそそのかしそうな奴ですしね。」

若しくは、
迷う間もあらばこそという速攻で
トイレのドアを愛刀にて切り刻みかねぬ、
優先順位が微妙な凄腕護衛官が付いているのも問題で。
判った降参だと、片手を挙げて見せたサンジであり。

 「…まあ、隠しごとにするつもりはないんだから、
  そうそういきり立ちなさんな。」

お前さんだって、紛うことなき大事な仲間だ。
そんな男を相手に、
そうまでコトを荒立てるつもりはないのだよと。
先程のサンジさんと似たような表情、
古顔の皆さんがうんうんと、やはりしみじみ頷いたところへと。

 「げんかいたいせー復活だとよ。」

またもや場の出端を挫くよに、
がっちゃ・がちゃりと荒々しい音を立てさせ、
年代もの、アールヌーボー仕様の意匠も優美な、
バータイプのドアハンドルを乱暴に回した誰かさんの御入來。
こちらに居合わせた文官系の顔触れと違い、
少々武骨で精悍な風貌の、
きびきびした物腰も頼もしい、彼こそは。
先程 誰かさんが口にしたように、
1日のほぼ殆どを、第二皇子の傍らに身を置いて過ごす、
特別護衛官のロロノア=ゾロ氏で。
きりりと吊り上がり気味の双眸を、殊更に吊り上げての、
なかなか真摯な切迫を、抱えておいでな雰囲気であり。
しかもしかも、そんな彼の口にした一言へ、

 「あああ。やっぱりか。」

頭を抱えたのがナミならば、
ウソップとチョッパーが顔を見合わせ、
サンジが新しいたばこへと火を点けて。


  「……っ、だから一体何の話だっつってんだよ、ごらぁっ!」



   サンタさん、聞こえてますか?の、
   もうそんな時期です、悪しからず……。



  〜Fine〜  11.11.28.


  *夏のお話以来だから、
   またまたお久し振りな王子様です。
   つか、皇子様出て来てないじゃん。(う〜ん…)
   昨年は息をひそめてたんじゃあなかったかの
   “げんかいたいせー”復活です。
   フランキーさん同様、何のこっちゃと思った方は、
   昨年、一昨年の今時分の拙作をどうぞ。(こらー)
   赤穂浪士の討ち入りとごっちゃにした年もありましたな。
   今年もきっと、
   皇子様はいろいろと思い悩んでおいでです。
   ウチの国では波や風の力で作ってる電気を
   日本とかよその国へ贈り物に出来ないかなとか。

   「海底ケーブル通してとかさ。」
   「残念、途中で摩耗するらしいぞ。」
   「まもー?」

   そこからの説明に困った
   剣豪護衛官さんだったりしてな。
(大笑)

  追記;UPしてから確認したら、昨年の今頃のお話、
     『
Before Santa comes...』にて、
     フランキーさんへも説明されてたみたいですね。
     そっか―。もう来てたのか。(ダメダメじゃん…)


   そんなこんなで
(おい)、相変わらず呑気な王室で。
   年末商戦、もとえ、クリスマスや年越しの宴が大変そうとか、
   それよりも欧州の経済危機は
   こちらへも押し寄せての かぶっとらんのだろうかとか。
   大人だったら そのくらいの背景考えての、
   きちんとしたお話を書くべきなのかなぁ?と
   多少は、少しは、
   ちっとは思わないでもなかったんですが。

    ……無理 無理 無理 無理 無理〜〜〜っ

    こどもだから、よめませ〜ん。(こら)


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